はじめに
こんにちわ、Saitaniです。
今回は前回の記事で紹介したJICAの有期雇用職員の進路になっている「長期専門家」の概要について紹介します。
キャリアパス:長期専門家になる方法
JICA長期専門家になる方法は主に空席公募、休職専門家、有期職員からなる3つのルートがあります。
空席公募
空席公募が長期専門家になる最短経路なのではなかと思いますが、他の方法と比較すると公募のため倍率は高いのではないかと思います。
Top – JICA PARTNERから、「専門家」等で検索すると様々な分野、種類の長期専門家のポストを見つけることができます。
個人的には、JICA案件を経験したことがある、JICAで働いたことがある人にとってベストなルートではないかと思っています。
休職専門家
休職専門家は、JICA職員、官公庁職員、コンサルタント会社に所属している方が休職して長期専門家になる方法です。
大抵は、組織内や組織外であらかじめ調整されると思いますので、1つのポジションに複数の有力な候補者が応募するということは生じにくいのではないかと思います。
有期職員から長期専門家へ
前回の記事で記載した通り、「特別嘱託」と「ジュニア専門員」は任期終了後に「長期専門家」になることが期待されています。
特にこの2つのポストの場合は、採用段階である程度派遣先のプロジェクトが決まっていることも多く、Term Of Reference (TOR)の赴任地に記載している場合が多いです。
「特別嘱託」は、「技術協力プロジェクト専門家(チーフアドバイザー)」か「技術協力プロジェクト専門家(技術移転型)」になることを期待されており、ジュニア専門員は「技術協力プロジェクト専門家(業務調整)」か「技術協力プロジェクト専門家(技術移転型)」になることが多いです。
JICA長期専門家の種類
長期専門家とは、派遣期間が1年以上の専門家のことを指しますが、大抵は2年契約が基本だと思います。
一方、短期専門家とは派遣期間が1年以内の専門家を指します。
技術協力プロジェクト専門家(チーフアドバイザー)
技術協力プロジェクトで、専門家チームを統括する専門家です。プロジェクトの日本側代表者として、チームのマネジメントや対外折衝などを行う高い能力が求められます。
また、マネジメントのみならず、相手国カウンターパート(C/P)に対し特定の課題・分野に関する助言・指導を行うこともあります。
技術協力プロジェクト専門家・個別専門家 | JICAについて – JICA
技術協力プロジェクト専門家(技術移転型)
技術協力のプロジェクトで、特定の課題に対して自らの知見・経験を活かして提案や技術移転を行う専門家です。
プロジェクトの中でも特に高い専門性や分析力等が求められます。
技術協力プロジェクト専門家・個別専門家 | JICAについて – JICA
技術協力プロジェクト専門家(業務調整)
技術協力のプロジェクトで、チーフアドバイザーが行うプロジェクト運営業務を補佐し、プロジェクトの調整業務を行う専門家です。プロジェクトがスムーズに進捗するよう、事務や会計など様々な手続きを中心となって担ったり、プロジェクトのチームメンバー、JICA本部、在外事務所、日本大使館、相手国政府、他ドナーなどの関係者と連絡調整を行ったりします。調整業務と併せて、相手国C/Pに対し、特定の課題・分野に関する助言・指導を行ったり、また、プロジェクトの広報活動を行ったりすることもあります。
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個別専門家
相手国政府機関等に配置され、省庁の局長などの政府高官等をC/Pとして、政策の企画立案に際して日本の経験や他国の取組事例などの紹介を行ったり、組織内の人材育成の支援や行政マネジメントに関する助言を行ったりします。
技術協力プロジェクト専門家・個別専門家 | JICAについて – JICA
日本の援助方針を踏まえつつ、ドナー会議や相手国政府との会議に参加し、援助協調を促進する役割を担うこともあります。
コンサルタントとJICA長期専門家の違い
技術協力プロジェクトにおける違い
JICA長期専門家は技術協力プロジェクトに従事し、コンサルタントとは別の成果を出すことを最近では期待されることが多いように思います。
コンサルタントとJICAの長期専門家の両方が従事するプロジェクトを「ハイブリット型」と呼びます。
技術プロジェクトは、Project Design Matrix (PDM)を基にプロジェクトを実施します。
PDMの中で、1.) 上位目標、2.)プロジェクト目標、3.)成果(アウトプット)、4.)活動が記載されています。
定期的にProject Cycle Management(PCM)研修はJICAで実施されており、PCM研修でPDMの作成等の方法を学ぶことができます。
1.)上位目標、2.)プロジェクト目標は、コンサルタントと同様で、残りの3.) 成果(アウトプット)と4.)活動が異なることが多いと思います。
立場の違い
コンサルタントの場合はコンサルタント会社とJICAが契約を結ぶの対し、JICA長期専門家は個人がJICAと直接契約します。
そのため、JICA長期専門家はコンサルタントの一員と比較し、JICA職員から休職専門家になる人はもちろんですが、JICAとの距離は近くなります。
現地カウンタパートから、JICA長期専門家はJICAの一員として見られることも多く、コンサルタントとの関係においても、クライアントとして接されることが多いです。
一方で、コンサルタントの所掌でない対応等が発生した際にはJICA長期専門家が対応する必要があります。よくあるのは、プロジェクトに訪問に来る要人等の対応です。
最後に
JICA長期専門家という経験は、途上国支援という業界において価値があると思っています。
1つは、プロジェクトに従事しながら新たな案件を形成することができる点です。現地から提案する新たな案件の必要性、重要性を一番認識できることに加え、案件形成から案件実施までの流れを実際に経験できるというのは、貴重な経験です。
もう1つは、実際にカウンタパートと現地で数年間働くことの重要性です。やはり、東京から想像している現地の状況、カウンターパートの能力というのは現地でしばらく働いてみないと良くわかりません。そういった現地の状況を分かった上で(JICAの場合)案件管理・形成、(コンサルタントの場合)案件実施(特に技術移転)ができるようになれば、明らかなパフォーマンスの違いを生めるのではないかと思います。
将来的にJICAで働くのか、コンサルタントで働くのかに関わらず、このJICA長期専門家という経験は価値があることに加え、JICA長期専門家という経験の中でいろいろな視点を得ることができるため、この業界で働くことが楽しくなるのではないかと思います。
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