はじめに
私が新卒で入社したコンサルタント会社の上司がよく「技術力さえあれば、英語ができなくても海外プロジェクトで活躍できる」と言っていました。
実際に、私自身はそういった会社の考えから国内業務を数年経験しました。
今回の記事は、中堅以上の開発コンサルタント(アサインがある専門家)、プロポ評価を行う発注者向けの記事ではありますが、途上国支援に関わりたい方々の英語学習のモチベーションにもなればと願っています。
成果品の質
海外プロジェクトの成果品として、コンサルタントは報告書等の提出をしなければなりません。
海外プロジェクトの場合は、報告書は英語で記載し、英語が母国語でない途上国の場合は、現地の言語でも報告書を作成する必要があります。
クライアントは基本的に英語の報告書をレビューしますが、その際に報告書の英語がわかりずらい(わからない)ことがあります。
どうしてこんなことが起こるのだろうと個人的に調査したことがあるのですが、どうやら日本語で報告書を作成してAI自動翻訳等を使って翻訳しているようでした。
海外プロジェクトで、報告書を日本語で作成するコンサルタントというのは私が知る限りあまり例がなく、通常は英語で記載した報告書を英語の校正ソフト等で修正する程度が多い印象です。
報告書等は、最終的に現地のカウンターパートにも提出されます。
ある程度英語・専門能力がある人が読んでもわかりずらい英語の専門的な報告書を、現地の(語学力はあるが専門性があまりない)翻訳者が報告書を訳し、カウンタパートの手に渡った時にどれほどの情報が残っているのか、ということを想像すると恐ろしい。。。
ちなみに同じ案件で、カウンタパートからコンサルタントのプレゼンテーションがわかりづらいとの苦情が出たことがあります。
どれほど技術的に素晴らしい提案でも、相手に伝わらなければ意味がなく、英語力はやはり重要です。
思わぬ経費増加
実は英語ができないと想定よりも高い経費を支払わなくてはいけないことがあります。
代表的なのが通訳です。
英語能力に自信がないコンサルタントさんは、稀に英語と現地の通訳よりも日本語と現地語の通訳を探そうとします。
ほぼ全ての国で日本語学習者は英語学習者よりも少ないため、通訳・翻訳費等は英語と現地語の通訳よりも高くなります。
もう1つは、再委託費です。
プロジェクトの中で、アサインメンバーだけでは行えないことも多くありません。
そういった際に現地企業に業務を再委託することがあります。
開発途上国の中には、JICAのスキームを使って日本に留学した人も多く、日本語が堪能な方も結構いらっしゃいます。
英語での再委託は、仕様書の作成から、契約交渉、事業管理等、プロジェクトの中でも高い英語力が要求される部分でもあると思います。
英語に自信がないコンサルタントの方は、現地の日本語ができる人・会社に再委託を依頼することが多くなります。
そうすると再委託先が限られ、相見積もりを行っても高い価格での比較になることが多いです。
相見積もりとは、極力3社以上の会社に見積依頼し比較することで、公平な契約金額等での再委託先を選定する方法です。
経費が高くなると、「当初想定はしていなかったけれど、この部分にもっとお金を使えたらより良いプロジェクトになる」ような場面でお金が使えなかったり、想定していた予算よりも高ければどこかしらの予算を削減しなければなりません。
経費の削減は、プロジェクト内での柔軟な対応や良いプロジェクトにしていくためには重要です。
最後に
成果品の質、経費の削減という点で、英語能力は海外業務に関わる全ての専門家において重要です。
特に、プロジェクトの全体総括をするようなマネジメントの方にとっては重要なスキルだと思います。
プロポの評価という点では、TOEICのスコアが使用されていることには海外で働く上では限界があるように感じています。
英語力の評価で、留学経験やWritingやSpeakingのあるTOEFL、IELTSをもっと優遇して欲しいなと思うところです。
また、プロポにおいては対象国での実績が高く評価されると思います。
その際に、翻訳作業に係る経費が異常に高くないか、これまでの再委託先の特徴(日本語が喋れる人が担当等)を把握することで経費に関する問題は避けられるかもしれません。
技術力、英語力の両方があるに越したことはありませんが、後者が疎かになることが多く、下手すると前者もあまり伴っていないケースもあります。
1担当程度であれば、他の専門家が補うこともできますが、マネジメントの方に問題があった場合は悲惨なことになります。
だから、プロポの評価対象者はマネジメントの方だけなのか。。。と私自身、最近思ったところです。
良い案件を目指し、海外プロジェクトで活躍するためには英語もある程度は磨く必要がありそうです。
コメント